断水してもトイレは使える?戸建・集合住宅別の対処法を防災士が解説

災害発生時の正しいトイレへの対処法

大規模災害発生時、電気やガス、水道といったライフラインが寸断され、停電や断水といった事態が発生する可能性があります。断水するとトイレが使えなくなりますが、「流す水さえ用意しておけばトイレは使えるのでは?」と考える方もいるかもしれません。実は災害発生時、断水した水を流すのは大変危険です!今回の記事では、災害発生時の正しいトイレへの対処法や日頃からの備えを、戸建と集合住宅別に解説します。

災害発生時トイレに水を流してはいけない理由

災害をはじめとした原因により断水しても、トイレに水を直接流せば使用はできます。ただし、災害が原因での断水時、トイレに水を流すのは戸建・集合住宅ともに厳禁です。災害発生時にトイレに水を流してはいけない理由を順に解説します。

水道管が破裂・破損している可能性があるため

地震などの大規模災害による断水の原因としてあげられるのが、水道管の破裂や破損です。地震による液状化や地盤沈下などが発生する大規模災害発生時は、水道管だけでなくトイレの汚水を流す配水管も破裂・破損している可能性があります。

配水管が破裂・破損しているトイレに水を流してしまうと、汚水が逆流してしまいます。集合住宅の場合、下の階まで汚水があふれてしまう可能性も高いです。

大規模災害発生時は、配水管の破裂・破損の可能性も考えてトイレに水を流すのは控えましょう。

処理施設の復旧が遅れてしまうことがあるため

液状化や地盤沈下などをともなう大規模災害発生時は、し尿処理施設や下水処理施設も大きな被害を受けていることがあります。家庭からの汚水を大量に流してしまうと、下水道の復旧が遅れる原因となってしまいます。ライフラインの復旧を送らせてしまうため、処理施設の復旧が確認されてからトイレの水を流すようにしましょう。

大規模災害発生時の正しいトイレの対処方法

非常用トイレ
断水や配水管の破裂、床上浸水などによりトイレが使えなくなったときの正しい対処方法を、戸建・集合住宅別に解説します。

戸建住宅での対処方法

戸建住宅での正しいトイレの対処方法を順に解説します。

上下水道・施設の稼動状況をチェック

戸建住宅の場合、まず水道管や配水管、上下水道施設が正しく機能しているかどうかを確認しましょう。水道や上下水道施設の稼動状況については、市町村や水道局などの公式サイトで確認できます。水道管や上下水道施設が正常に起動していても、配水管に破裂や破損があればトイレは使えません。地盤沈下や液状化、床上浸水が起きてるときにはトイレの使用を控えましょう。

確認後、少しずつトイレを使用する

水道管や配水管、上下水道施設が稼動していることが分かった、または目視で水道管や排水管に異常がないと確認できたら、トイレに水を流してみましょう。詰まりの原因となることがあるため、この時トイレットペーパーやお風呂の水などは流さないようにします。水が流れることが確認できたら、少しずつトイレを使用しましょう。

水を流したとき、またはトイレを使っている間に以下のようなことが起きたら復旧までトイレの使用は控えます。
・トイレの水が溢れる
・トイレの水の流れがいつもと違う(流れが逆、つまりながら流れるなど)
・便器内の水位が上がりはじめる
・便器内の水が跳ねはじめる
・便器内の水からボコボコ音がするようになる

復旧後は水道管の空気を抜いてから使用する

しばらくの間断水していて復旧後は、すぐにトイレの水を流すのは厳禁です。水道管の中に空気がたまっている状態で断水すると、給水後たまっていた空気が圧縮されて、トイレのタンクや部品などを破損するほどの衝撃となることがあります。断水後に水を使いたいときには、まずキッチンや洗面所、浴室などの水道の蛇口を開き、空気を抜いてからトイレの水を流すようにすると安心です。

なお、復旧後水が水道管の錆などによって濁っていることがあります。水が濁っているときには、水を流し続ければ透明な水になります。

断水時は止水栓を閉めておく

断水から復旧したときに、トイレのタンクから水があふれてしまうことがあります。外出時などに水道が復旧しても水があふれないように、断水時はトイレの止水栓を閉めておくと安心です。トイレの止水栓は、トイレの横や床下に付いています。マイナスドライバーやコインを使って、止水栓を閉めましょう。水道が復旧したら、止水栓を開きます。

水が止まらないときにはタンク内の浮球を元に戻す

断水からの復旧後、トイレのタンク内にある浮球がズレているとタンクから水があふれたり、トイレで流した水が止まらなくなったりすることがあります。タンクの蓋を開け、タンク内の浮球を正しい位置に戻せば、水が止められます。タンクの蓋を開けるときには、止水栓を閉めてから行いましょう。

集合住宅での対処方法

集合住宅での正しいトイレへの対処方法を解説します。

受水槽による給水の場合は注意

集合住宅で大規模災害によりトイレが使えなくなった場合の対処方法は、基本的に戸建住宅と同じです。集合住宅の場合は、管理組合や管理会社に上下水道や水道管、配水管の状況を確認しましょう。

集合住宅の場合停電によっても水が流れなくなる場合があります。地下や屋上の受水槽の水を生活用水として使用している集合住宅の場合、停電すると受水槽から水を送るポンプが動かなくなり、給水ができません。水道管や配水管、上下水施設は正常に稼動しているものの、停電や受水槽の水がなくなったことによってトイレが使えなくなるリスクがあることも覚えておきましょう。

断水時に水を貯めるのは厳禁

貯水槽を使用している集合住宅の場合、水道管からの給水がストップしても停電していなければ貯水槽から水を給水できます。トイレも使用できますが、浴槽に生活用水を貯めるのは厳禁です。貯水槽内の限りある水がすぐになくなってしまいます。貯水槽の水は集合住宅で生活している人が共有して使用するものなので、断水がはじまったら生活用水を貯めるのは止めましょう。

戸建・集合住宅ともに災害用トイレ(非常用トイレ)を備蓄しておこう

戸建・集合住宅ともに大規模災害発生時、水道管や配水管、上下水道施設が正常に稼動していないときや、使えるかの確認ができないときにトイレを使用するのは厳禁です。復旧までのトイレの備えとして、災害用トイレ(非常用トイレ)を備蓄しておきましょう。

災害用トイレ(非常用トイレ)の備蓄量は、最低3日間、できれば1週間が目安です。ただし2024年1月に発生した能登半島地震のように、災害の規模によっては1ヶ月以上水道の復旧に時間がかかる場合もあります。1ヶ月程度の災害用トイレ(非常用トイレ)の備蓄があれば安心ですが、まずは自宅の保管スペースなども考え、無理のない量から災害用トイレ(非常用トイレ)の備蓄をはじめることをおすすめします。

まとめ

災害発生後にトイレの水を流してはいけない理由とともに、戸建・集合住宅の正しいトイレの対処方法を解説しました。トイレが使えなくなる災害はいつ起きるか分かりません。今日からできる範囲で、災害用トイレ(非常用トイレ)の備蓄をはじめておきましょう。

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