近年発生が予測・警戒されている「南海トラフ地震」。南海トラフ地震発生の可能性が高まったとき、警戒が必要なときには「南海トラフ地震臨時情報」が発表されます。南海トラフ地震臨時情報が発表されたときに、「いろいろな情報があるけれども、今はどの段階?」「発表されたらどうすればいい?」と疑問を持つ方も多いかもしれません。
今回は南海トラフ地震臨時情報の概要や種類、発表されたときの対応方法を解説します。
Contents
南海トラフ地震臨時情報とは
南海トラフ地震臨時情報とは、以下の場合に気象庁から発表される情報です。
- 南海トラフ沿いで異常な現象を観測された場合
- 地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価された場合
南海トラフ地震臨時情報の段階・種類
南海トラフ地震は、情報名の後にキーワードを付記して「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」のように発表されます。付記されるキーワード別の南海トラフ地震臨時情報の段階・種類を解説します。
調査中
調査中は、以下の段階に該当します。
- 南海トラフ沿いで発生した異常現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかの調査が開始された場合
- 上記の調査が継続されている場合
- 臨時に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する場合
南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会は、以下のいずれかに該当する場合に開催されます。
- 監視領域内でマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合
- 1カ所以上のひずみ計での有意な変化と、他の複数の観測点で関連が予測される変化が観測され、想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合
- ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測した場合
- 想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測される場合
- 南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測した場合など
巨大地震警戒
南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表され、調査と評価開始後、想定震源域内のプレート境界において、M(モーメントマグニチュード)8.0以上の地震が発生、と評価した場合、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」の表記に変化します。現象発生後最短2時間程度で巨大地震警戒へ変化しますが、検討が2時間以上となる場合は「調査中」を適時発表して調査中であることを伝える場合もあります。
巨大地震警戒発表後は、緊急災害対策本部長から推進地域内の都府県知事や市町村長への指示、内閣総理大臣から国民に対する周知等が実施され、気象庁からは継続して地震活動や地殻変動の状況を「南海トラフ地震関連解説情報」にて発表されます。
後発地震が発生せず1週間が経過した場合、国は後発地震に対して警戒する措置を解除、さらに1週間後発地震に対して注意する措置をとることを呼びかけます。その後後発地震が発生しないままさらに1週間が経過した場合、国から後発地震に対して注意する措置を解除し、通常の生活に戻る旨が呼びかけられます。
国からの警戒措置解除後も、気象庁から「南海トラフ地震関連解説情報」にて、地震活動や地殻変動に関する情報が発表されます。
巨大地震注意
巨大地震注意は、以下の場合に発表されます。
- 想定震源域内のプレート境界においてM7.0以上、M8.0未満の地震が発生したと評価した場合(巨大地震警戒に該当する場合は除く)
- 想定震源域内のプレート境界以外、および想定震源域の海溝軸外側50km程度までの範囲で、M7.0以上の地震が発生したと評価した場合
- 想定震源域内のプレート境界面において、通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)も(巨大地震警戒)発表時と同じく、現象発生後最短2時間程度で巨大地震注意に変化しますが、検討が2時間以上となる場合は「調査中」を適時発表して調査中であることを伝える場合もあります。
巨大地震注意発表後、国から国民に対して注意する措置をとる旨の呼びかけなどが行われます。気象庁からは、南海トラフ地震関連解説情報にて、地震活動や地殻変動の状況についての情報が継続的に発表されます。
後発地震が発生しないまま1週間(ゆっくりすべりケースの場合は、すべりの変化が収まってから変化していた期間と概ね同程度の期間)が経過した場合、国から、後発地震に対して注意する措置を解除し、通常の生活に戻る旨が呼びかけられます。同様にこれ以降の地震活動や地殻変動に関する情報は、気象庁から南海トラフ地震関連解説情報で発表されます。
調査終了
巨大地震警戒、巨大地震注意いずれにも該当しない現象と評価された場合、調査終了となります。
南海トラフ地震関連解説情報
南海トラフ地震関連解説情報とは、以下のような場合に南海トラフ地震臨時情報とは別に発表する情報です。
- 観測された異常な現象の調査結果発表後、推移を説明・解説する場合
- 南海トラフ地震臨時情報を発表する場合を除いて、南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会の定例会合における調査結果を発表する場合
- 南海トラフ地震臨時情報発表後すでに必要な防災対策が取られていることを前提に、調査を開始した旨や調査結果を発表する場合
南海トラフ地震臨時情報が発表された場合の対応方法
南海トラフ地震臨時情報が発表された場合、「南海トラフ地震防災対策推進地域」(高さ3m以上の津波または震度6弱以上の揺れが発生すると想定される地域などを基に指定された地域)に対して、国や自治体より住民や企業関係者へ向け、情報の内容や取るべき行動が発表されます。南海トラフ地震防災対策推進地域については内閣府の防災情報ページにて公表されていますので、住居や勤務先が該当していないかを確認しておきましょう。
南海トラフ地震臨時情報発表時に取るべき行動は、政府や自治体から発表されるキーワード(巨大地震警戒・巨大地震注意・調査終了)に応じて異なります。各段階ごとに、推奨される対応方法を解説します。
調査中
南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表されたら、避難や備蓄の確認など状況に応じた準備や行動を開始します。最短2時間で調査結果が発表され、巨大地震警戒・巨大地震注意・調査終了いずれかのキーワードが発表されます。
巨大地震警戒
巨大地震警戒が発表されたら、日々の防災の備えを確認し、発表から1週間程度は、地震発生時すぐに避難ができるように、以下のような準備をしておきます。
- 家族の所在位置をつねに把握しておく
- 非常用持ち出し袋などを玄関に出しておく
- 就寝時、枕元に履き慣れた靴を置いておく
高齢者の方や障害者の方など、地震発生後の避難では間に合わない可能性のある人(要配慮者)は、事前避難を行うこともあります。
発表から1週間経過後も警戒を怠らず、備蓄の確認や避難準備を継続しましょう。自主避難も必要に応じて行います。
2週間経過後国が後発地震に対して注意する措置を解除します。通常の生活に戻る旨が呼びかけられますが、南海トラフ地震が発生する可能性がなくなったわけではありません。地震への備えを続けながら、日常生活を送りましょう。
巨大地震注意
巨大地震注意が発生した場合も、基本的に巨大地震警戒と同じ対応を行います。必要に応じて自主避難も行いましょう。発表から1週間経過後、地震への備えを続けながら通常の生活に戻ります。
調査終了
巨大地震警戒・注意が解除されると調査終了となります。地震への備えを続けながら通常の生活に戻りましょう。気象庁から南海トラフ地震関連解説情報が継続的に発表されますので、引き続き情報収集をし警戒をすることも重要です。
まとめ
南海トラフ地震臨時情報の概要や発表時の対応方法を解説しました。南海トラフ地震臨時情報は、発生した事象や巨大地震の発生する可能性の目安となる非常に重要な情報です。情報収集とともに、日頃の災害への備えを忘れずに行いましょう。
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