電気は日常生活だけでなく、経済活動を支える重要なインフラです。企業のオフィスや事業所が停電に見舞われた場合、空調や電子機器が使用できなくなることで事業活動を停止せざるを得なくなることがあります。復旧までの時間が長くなると二次被害が起きる可能性も高く、企業としては日頃から停電対策をしておくことが必要です。今回の記事では、企業向けの停電対策と、停電時を踏まえて用意しておくべき必要なものを解説します。
Contents
企業が停電に見舞われる2つの要因
おもに企業が停電に見舞われる2つの要因に、「災害」と「外的要因」があります。
災害による停電
災害大国と呼ばれる日本では、さまざまな災害が発生する可能性が高いです。災害の種類を問わず、規模や被害が甚大であればあるほど二次被害として停電が発生します。
おもな災害による停電を以下にまとめました。
災害の種類 | 停電を引き起こす原因・要因 |
地震 | ・液状化現象・家屋の倒壊による送電線設備の損傷
・地中の埋没ケーブルの損傷 |
台風(強風) | 強風および飛来物による送電線設備の損傷 |
豪雨 | ・土砂災害による送電線設備の損傷
・河川の氾濫・洪水による送電線設備の浸水 |
豪雪 | 着雪および着雪した樹木などによる送電線設備の損傷 |
落雷 | 送電線設備へ直接落雷による損傷 |
火災 | ・火災による送電線設備の損傷
・消防の消火活動のために一時的な停電を行う場合もある |
外的要因による停電
災害以外にも、以下のようなさまざまな外部要因にて停電が発生します。
外部要因の種類 | 停電を引き起こす原因・要因 |
設備事故 | 送電線設備の不具合による停電 |
車両事故 | ・自動車が電柱に接触して電線が切れる
・掘削重機が地中ケーブルを損傷させる ・クレーン車が電線と接触して電線が切れる |
動物 | ・鳥が送電線設備に巣作りをする
・動物が送電線設備に接触する |
想定される停電による企業への影響・被害
停電が発生することで、まず電子機器や電化製品が使えなくなり企業には以下のような悪影響が発生します。 ・オフィスの電気が消える ・エアコンや室外機、加湿器などの空調設備が使用できなくなる ・パソコン、サーバー、タブレットなどの電子機器類が使えなくなる ・エレベーターや自動ドア、セキュリティロックなどが使えなくなる ・電車が動かなくなり帰宅困難者が発生する さらに、停電から復旧までの時間が長くなれば長くなるほど、以下のような二次被害が発生する可能性が高くなります。
発生する被害 | 企業への悪影響 |
電子機器の故障 | ・サーバーに不具合が発生する
・パソコン内のデータが消失する |
閉じ込め | ・エレベーター内に閉じ込められる
・カードキーやロックが使えないためオフィス内に閉じ込められる |
通信障害 | 電話やインターネットが使用不可になる |
火災 | ・断線したケーブルやコンセントが通電する
・電化製品が可燃物に触れて通電する ・照明用のろうそくから出火 |
断水 | 供給ポンプや浄水ポンプの停止により水道から水が出なくなる |
健康被害 | ・空調や暖房器具が使えないことによる熱中症や低体温症
・トイレを我慢することによる膀胱炎や肝臓への負担、感染症など |
二次被害が発生すると、従業員への健康被害や機密情報の消失、オフィス火災といった事業停止に追い込まれる甚大な被害となる可能性もあります。日頃から停電対策と停電に必要なものの備えを行っておくことが重要です。
企業が日頃から行っておくべき停電対策
停電は災害やほかの要因で発生するため、いつ起きるか分かりません。企業が日頃から行っておくべき停電対策を順に紹介します。
事業継続のできる仕組み・システムを導入する
停電が起きても、自社内で発電や給電ができる、または電気がなくても動く仕組みやシステムを導入することで、停電から復旧までの電気をまかなうことができます。以下のような仕組みやシステムの導入を検討しておきましょう。
・空調・換気システムのための電源確保
・電子機器への無停電電源装置(UPS)の準備
・社用車を電気自動車(EV)へ変える
・パソコンをデスクトップからバッテリー駆動型のノートパソコンにする
・太陽光発電パネルと蓄電池を設置する
・非常用自家発電装置を設置する
重要なデータはバックアップを取っておく
停電による重要なデータの消失を防ぐために、クラウドやデータセンターなどにデータのバックアップを取っておきましょう。
在宅勤務や別オフィスへ切り替えできる体制を整える
自社オフィスが停電に見舞われても、従業員の自宅のあるエリアやほかの支店、支社、工場などは停電の影響を受けていないエリアであることがあります。停電発生時は在宅勤務や、サテライトでの働き方に切り替えられる体制をあらかじめ整えておけば、停電時も事業活動を継続できます。
サーバーやシステムは分散させておく
サーバーや基幹システムなどの常時稼動するものは、複数拠点に分散配置しておきましょう。分散配置をすることで、停電の被害を受けなかったエリアのサーバーやシステムは稼動を続けられます。
オフィスの水道やトイレが使えるか確認しておく
オフィスビルやテナントの入っているマンションなどによっては、停電時給水ポンプが停止し水道が止まってしまうことがあります。水道が止まればトイレも使えません。日頃から、停電時に水道はふだんと変わらず使えるかどうかを確認しておきましょう。使えない場合には、水や簡易トイレを備蓄しておく必要があります。
企業が停電対策に準備しておくべきもの
企業が停電対策に準備しておくべきものを順に紹介します。
非常用ライト
停電時の灯りを確保するために、懐中電灯やランタンなどの非常用ライトを準備しておきましょう。コンセントからの給電なしで稼動する、乾電池式または手回し発電のものがおすすめです。
携帯用ラジオ
停電時の情報収集用に携帯用ラジオを備蓄しておきます。停電時はテレビは使用できないことに加えて、スマートフォンもバッテリーが切れれば使用できなくなってしまいます。非常用ライトと同じく、乾電池式または手回し発電の物を選びましょう。
冷蔵庫や冷凍庫があれば保冷グッズ
冷蔵庫や冷凍庫がオフィスや事業所にあれば、保冷剤などの保冷グッズを常備しておくと夏場の停電時も安心です。
非常食、保存水
帰宅困難者や、周辺の避難者を受け入れるときなどには非常食や保存水を備蓄しておきましょう。
簡易トイレ(災害用トイレ)
停電にともなってオフィスや事業所で断水が発生する可能性がある場合、簡易トイレ(災害用トイレ)も用意しておきましょう。停電や断水が長引く可能性も踏まえて、使用する人数 × 最低3日間、できれば1週間分の簡易トイレを用意しておくことをおすすめします。
まとめ
停電が発生する原因と企業への停電による被害や悪影響、さらに企業の停電対策や停電時に必要なものを紹介しました。停電は突発的に起きる可能性があり、長期化すれば企業の事業活動や従業員の健康に悪い影響を与えてしまう恐れがあります。日頃から停電への対策と備えを行っておきましょう。
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