台風や豪雨による短時間での記録的な大雨、水量の増加による河川の氾濫など、日本では洪水害が発生しやすい国土にあります。8月は気候が不安定になりやすく、ゲリラ豪雨をはじめとした異常気象が発生しやすい時期です。地震に対する防災対策やBCPへ取り組んでいるものの、洪水害への対策はまだ手が回っていない、という企業も多いかもしれません。今回は内閣府防災担当発表の資料より、企業の洪水害での被害と取り組み事例を7つ紹介します。企業として今日からやるべき洪水害への備えについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
企業の洪水害対策の被害と取り組み事例7選
内閣府防災担当発表の資料「洪水害への事前の備えに関する事例集」では、実際に洪水害の被害に合った企業の、被害状況とやっておいてよかった対策について発表されています。他の企業の事例からは、自社で行うべき洪水害への対策のヒントが得られるでしょう。
同資料より、企業の洪水害対策の被害と取り組み事例を7つ紹介します。
引用:内閣府|洪水害への事前の備えに関する事例集
小売業A社:浸水被害を土のうの常備で防止
岡山県にある小売業のA社は、複数の店舗内で浸水に見舞われ設備、車両、在庫、PC等に被害が出ました。同社では過去に同様の浸水被害の経験があり各店舗にて土のう袋を常備していました。今回の浸水では3店舗が入り口に土のうを積んだところ、2店舗は店内まで浸水し被害を受けたものの、1店舗は土のうによって浸水被害を免れました。今後はより浸水被害を防止するために、止水板の導入も検討しています。
卸業・小売業B社:高所への機器や設備配置換えで早期の事業復旧
茨城県にある卸業・小売業のB社は、本社が浸水被害に見舞われました。30年前に水害で被災した経験を活かし、倉庫の1m程度のかさ上げや、建物内の電源の位置を2m程度浸水しても大丈夫な高さへの設置、サーバーの2階への設置を行っていました。今回の浸水被害によって1階部分が被災し、1階の設備や商品在庫は浸水してしまったものの、2階部分に移設した電源機器は使用できたため、被災後の洗浄作業などの迅速な片付けや、インターネット販売等の早期再開につながり、事業の早期復旧を実現しています。
製造業C社:重要情報とデータのバックアップによる情報消失防止
広島県にある製造業C社では、事務所・工場ともに50cm程度の浸水被害を受け工作機械・検査機器や車両、製品、仕掛品、事務所内のパソコン、コピー複合機などが水に浸かってしまいました。あらかじめ生産管理ソフトのデータをサーバーにバックアップを取っていため、生産設備の復旧と同時に事業の再開を実現していました。サーバーもあらかじめ1mくらいの高さの位置に設置していたため、事務所内が浸水してもデータは無事でした。今回の被災経験を活かして、データはクラウドでバックアップするようにしています。
物品賃貸業D社:非常用電源の設置と燃料備蓄
福島県にある物品賃貸業D社では、台風による豪雨により本社が50cm~1m程度浸水し、車両や設備等に被害が発生しました。福島県に本社を建てた時点で水害リスクを踏まえ、あらかじめ非常用電源はポータブル型に、フォークリフトを外部電源として使える装置を常備していました。東日本台風襲来時にはキューピクルが生きており、非常用電源を利用することはなかったものの、台風の後さらなる水害に備え、キューピクルを工場の上部(高さ5m程度の場所)への移設も実行しています。
ガス業E社:火災保険と共済への加入
岡山県のガス業E社では、本社工場が1.5m浸水したことで機械設備に泥水が混入。廃棄処分となりました。被災の半年前に水災補償付帯の火災保険を、新しい機械設備導入にともなって想定被害金額と保険金の比較検討を行い、保険内容を見直していました。今回の被災の物的損害額の約7割を保険金でカバーすることができ、保険金を早期に受け取れたことによる復旧資金の早期確保を実現。事業中断からの早期回復に活用できました。
製造業F社:安否確認システムの導入
福島県の製造業(車載製品の製造)F社では、東日本台風により本社が1m程度浸水したことで、1階部分にあった機械設備等が全損となりました。すでに東日本大震災の経験から警備会社が提供する安否確認システムを導入していたことで、災害時に安否確認のメールが社員の携帯電話に送信、各社員が無事や負傷といった状況を入力して、管理者が状況確認ができるシステムを構築していました。東日本台風発生後システムを利用して社員の安否確認を行った事に加えて、浸水からの早期復旧のための復旧人員の確保にも役立ちました。
製造業G社:BCP策定と実動訓練の実施、社員の多能化といった社内体制の整備
福島県の製造業G社では、工場1階部分の浸水により、1億円以上の損害が発生しました。東日本大震災の経験から地震を想定したBCPを策定していたことで、復旧に向けた社内体制の構築がスムーズに進み、加入していた保険の特約により浸水した工場の洗浄サービスを受けることができました。また別拠点のFA機器製造事業所が浸水した機械設備の修理を担うなど、早期の事業復旧に役立ちました。今回の浸水被災から、水害を想定したBCPの策定を進めています。
企業が今日からやっておくべき洪水害への備え
企業の洪水害の被害や取り組み事例からは、浸水により損害が発生したもののあらかじめ行っておいた備えや取り組みによって、被害を最小限に抑えられていたことも分かります。今後洪水害はいつ起きるか分からないため、企業としては地震と同じく、洪水害も想定した備えが必要です。
とはいえ「何からはじめれば良いか分からない」という方も多いかもしれません。今日からできる、企業の洪水害への備えについて解説します。
洪水害への備えをプラスする
すでに地震への備えを行っている場合には、洪水害への備えをプラスすることで対応できます。たとえば地震に備えて飲料水や食料の備蓄を企業で行っている場合には、洪水害のさいにも活用できます。
洪水害への備えについては、以下のようなものがあります。
・浸水しない高所へ重要機器(パソコンやサーバーなど)を移動しておく
・土のうやブルーシートなどを備蓄しておく
・風水害付帯保証のある保険への加入や見直しを行っておく
BCPの策定を進めておく
BCPとは、災害や非常事態などで企業の事業活動が困難になった場合、早急に復旧を目指したり、代替案で事業を継続したりするための計画を策定しておくことです。被災していないエリアの支社に代替業務を依頼する、テレワークができる仕組みを構築しておくなど、洪水害にみまわれたときにも事業を継続するための計画や仕組みを構築しておきましょう。
BCPの概要や策定方法については、以下の記事でくわしく解説しています。
BCP(事業継続計画)とは?企業としてやるべき災害への対応を解説
災害用トイレを備蓄しておく
建物の浸水が発生するほどの洪水害に見舞われると、電気やガス、水道といったライフラインが寸断される可能性も高いです。水道が使えないと、当然ですがトイレが使えません。食料や飲料水などの災害用備蓄の中に、災害用トイレ(非常用トイレ)も備蓄しておきましょう。
マイレットでは、法人様向けの災害用トイレを幅広くご提供しております。多くの自治会や公共施設の備蓄しても、導入事例が数多くあります。従業員の数やトイレのタイプに応じたラインナップがございます。ぜひご利用ください。
まとめ
内閣府防災担当の資料から、企業の洪水害の被害と取り組みの事例、今日からできる洪水害の備えについて解説しました。地震や台風と同じように、洪水害もいつ起きるか分かりません。BCPの策定や備蓄といった備えを今日から進めておきましょう。