災害への備えとして、水や食料、防災グッズの備蓄や避難所の確認などを行っている方も多いかもしれません。実は意外と忘れがちな「トイレの備え」。災害時、トイレへの備えを怠るとさまざまな悪影響が出る「トイレハザード」が発生する可能性があります。今回は防災士の目線より、災害時に準備すべきトイレの備えについて解説します。
企業・法人が災害対策を行う重要性や、災害対策が義務化されている自治体については以下の記事でくわしく解説しています。
法人向け防災用品の選び方と社員数に応じた備蓄量目安を防災士が解説!
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トイレの備えを行わないことで発生する問題
地震をはじめとした大規模災害が発生すると、水道管や排水管の破損や停電による断水、家屋の倒壊などの影響で自宅のトイレが使えなくなる場合が多いです。特定非営利活動法人日本トイレ研究所が実施した「大地震におけるトイレの備えに関する調査結果」では、「大地震が発生すると、断水や停電、下水道管の破損などの理由で水洗トイレが使えなくなる可能性があることを知っているか」の質問に対して、「知っている」と全体の90.3%の方が回答しました。ところが「防災グッズとして自宅に備えているもの」として、「災害用トイレ」をあげた方は全体のわずか16.9%にとどまっています。
災害時トイレが使えなくなるのは知っているものの、それにより発生する悪影響についてはあまり知られていないことで、トイレの備えを重視していない方が多い傾向にあると考えられます。
まずは災害時、自宅のトイレが使えなくなることで発生する問題や悪影響を解説します。
避難所や仮設トイレはすぐに使用できない
「自宅のトイレが使えなくても、他のトイレを使えばいいのではないか?」と考えていませんか?特定非営利活動法人日本トイレ研究所が実施した「大地震におけるトイレの備えに関する調査結果」でも、「自宅の水洗トイレが使えなくなった時にどうするか」の質問に対して、「避難所のトイレを利用する」がトップ、「公園や公衆トイレを利用する」が次に多い回答となりました。
大規模災害発生時、仮設トイレは設置されますが設置には時間がかかります。さらに避難所のトイレや仮設トイレ、公共のトイレには多くの人が殺到するため、なかなか順番が回ってこない、不衛生なトイレを使わなければいけない、といった問題が発生します。
自宅が排泄物により不快な環境に
「排泄物はビニールにひとまず入れておけば?」という考えも危険です。災害時、ゴミの回収はいつ来るか分かりません。排泄は自然の摂理のため止めることはできず、ライフラインが復旧するまでトイレは使えず、排泄物のビニールはたまっていく一方となります。ビニール袋が蓄積する様子や臭いは、ただでさえストレスの大きい自宅避難生活の中で、さらなるストレスとなってしまうでしょう。
トイレが使えないことによる健康被害も
災害によってトイレが使えないことによって、さまざまな健康被害が発生します。避難所や仮設トイレは不特定多数の人が利用するため、不衛生な環境となります。また、自宅避難時も排泄物を流さずに便器にためる、またはビニール袋でためることで、不衛生な環境に。その結果ノロウイルスをはじめとした感染症を引き起こす原因となります。
「トイレが使えないなら、トイレを使う回数を減らせばよいのでは」と考える人も少なからずいます。その結果水分の摂取をひかえるようになり、脱水症や膀胱炎、便秘などの原因にもなります。特に気温の高い夏場は熱中症を引き起こす原因にもなり、大変危険です。
これらの問題を解消するためにも、災害時のトイレの備えは重要と言えるでしょう。
具体的な帰宅支援および社内避難のための防災用品・防災グッズについては以下の記事でくわしく解説しています。
法人向け防災グッズのおすすめ商品5選を防災士が厳選!会社で最低限用意すべき防災用品や備蓄とは?
今日からやっておきたい、災害へのトイレの備え
災害時、トイレの備えをしておかないことでさまざまな悪影響が出ることが分かりました。ほかの防災グッズの備蓄や災害への備えと一緒に行っておきたい、災害へのトイレの備えについて順に解説します。
便座設置タイプの災害用トイレを備蓄しておく
自宅や避難所の便座に設置して使用できる、便座設置タイプの災害用トイレを備蓄しておきましょう。備蓄する量の目安は最低3日間、できれば1週間分です。たとえば家族4人なら1人1日あたり5回使用すると計算し、3日分で4×5×3=60回分になります。まずは無理のない量から備蓄をはじめてみましょう。
備蓄用の便座設置タイプの災害用トイレとしておすすめなのが、「マイレット」シリーズです。排便袋を便座にセットし、用を足したあと抗菌性凝固剤をふりかけると、排泄物が固まります。その後袋をしっかりと結ぶだけで処理は完了。はじめてでも簡単に使用できます。最長10年間の備蓄が可能です。
10回分の「マイレットmini-10」や100回分の「マイレットS-100」を展開し、100回分なら家族4人分5日間(4人×1日5回×5日間)の備蓄に相当します。
携帯タイプの災害用トイレを持ち出し袋や車内に備蓄しておく
自宅から避難所へ避難するときに持ち出す非常用持ち出し袋や、車の中には携帯タイプの災害用トイレを備蓄しておきましょう。携帯タイプはコンパクトで持ち運びしやすい形状になっているのが特徴で、持ち出し袋や車内に入れても邪魔になりにくいのがメリットです。
携帯タイプの災害用トイレは、ミニ便座と凝固剤、排泄袋がセットになった「アウトドアmini-10」や、さらに目隠しポンチョもセットでプライバシーを守りながらトイレができる「おでかけトイレPOTON Ⅳ」がおすすめです。アウトドアでトイレがないとき、渋滞やドライブ中にトイレに行きたいときなどにも使用できます。
家族に合わせた他の備蓄も忘れずに
女性は生理用品を多めに備蓄しておきましょう。また、災害時断水となると普段よりも体を清潔に保つのが難しくなります。特に女性は膀胱炎などの尿路感染症にかかりやすくなるため、使いきりのビデシャワーや赤ちゃんのおしりふきなどの、衛生用品をあわせて備えておくと安心です。オープンな場所でトイレを使う必要がある場合は、目隠しとなるポンチョなどの準備も忘れずに。
また、赤ちゃんや小さなお子さん、高齢者の方のいるご家庭ではおむつの備蓄も忘れないようにしましょう。おむつは給水量が多いため、いざというときに大人用の簡易トイレとしても使用できます。
まとめ
災害時トイレが使えないことで発生する不具合や、やっておくべきトイレの備えを解説しました。水や食料といった備蓄に対して、災害用トイレの備えは忘れられてしまいがちです。災害時、断水でトイレが使えなくなることを想定した上で、今日からトイレの備えをはじめましょう。