企業の防災訓練は義務!重要性や実施すべき防災訓練を解説

企業の防災訓練は義務

地震や豪雨、火災などいつ起きるかわからない災害に備えて、さまざまな場所で防災訓練が実施されています。実は企業にも、従業員の命や財産を守るための防災訓練が義務化されています。今回の記事は、企業が防災訓練を実施する重要性や行うべき防災訓練を解説します。

企業の防災訓練は義務化されている

消防法第36条「防災管理定期点検報告」により、企業の防災訓練は義務化されています。企業のオフィスを含む「大規模建築物等」は防火対象物に該当し、管理者は以下の防火管理事項が義務付けられています。

・統括管理者、班長等で構成された自衛消防組織を設置し、火災、地震等の災害が発生した場合の活動を行わせること
・防災管理者を選任し、防災管理上必要な業務を行わせること
・防災管理者に防災管理に係る消防計画を作成させ、地震等の災害に備えた避難訓練を年1回以上実施すること。
・防災管理者に防火管理者の行う防火管理上必要な業務を行わせること
・防災管理点検資格者に防災管理上必要な業務が適正に行われているか、毎年点検を行わせ、消防署に報告すること(特例認定を受けた場合を除く)

大規模建築物等は不特定多数の人が出入りする「特定用途防火対象物」と用途は限られているものの多くの人が出入りする「非特定用途防火対象物」に分かれ、義務付けられている防災訓練の回数が異なります。

建物の種類 義務化された防災訓練の回数 主な建物の例
特定用途防火対象物 年2回 百貨店、医療施設、飲食店、福祉施設、映画館、ホテルなど
非特定用途防火対象物 年1回 学校、工場、事業所、オフィス、倉庫、図書館など

自社の建物の規模や用途によって、行うべき防災訓練の回数や防災管理点検の項目が異なってきます。法令で定められている要項について確認し、企業としての防災義務を果たしましょう。

企業が防災訓練を実施する重要性

企業の防災訓練が義務化されている背景にはさまざまな理由があります。企業が防災訓練を実施する重要性を解説します。

利害関係者の命や安全を守るため

企業には、従業員や顧客といった利害関係者の生命を守る義務が生じています。防災訓練を実施することで、災害発生時に従業員が顧客の安全を確保し、命を守るために行うべき適切な行動を学習できます。

災害による被害は、自然災害による直接的な被害である一次被害と、一次被害によるダメージで発生する二次被害に分けられます。たとえば地震の揺れによって建物に亀裂が入るのは一次被害、水道管や配線が損傷し、ライフラインが使えなくなるのが二次被害です。企業の防災訓練では、一次被害と二次被害両方を想定することで、より利害関係者の命と安全の確保につながります。訓練を通じて、避難や救護などの具体的なシミュレーションを行っておきましょう。

企業の規模や建物の種類によっては、消防法により火災発生を想定した訓練が義務付けられていることがあります。利害関係者の命と安全を確実に守るために、義務付けられている回数はもちろん、定期的に訓練を行うことが重要です。

事業の継続性の確保

大規模な災害発生により、事業所や工場といった自社の施設が大きなダメージを受けることがあります。設備や機器に故障や損傷が出ることで、事業の継続が難しくなることも多いです。そこで、平時より災害発生時や非常事態に損傷を最低限に抑え、速やかな事業の復旧や継続させるために、BCP(事業継続計画)を策定しておきます。

BCPの中に防災訓練を盛り込むことで、事業継続に向けて優先的に普及する事業や施設、事業継続や再開のための方法や手順の洗い出しにつながります。防災訓練時にBCPの手順や工程をシミュレーションすることで、BCPのスムーズな実行につながります。

BCPを策定することで、事業継続性の強い企業として利害関係者からの信頼度向上も期待できます。

利害関係者への損害回避

企業は顧客に対し、災害や非常時にも可能な限り製品や商品、サービスの供給を続ける責任を負っています。自社が被災し従業員や設備にダメージを受けると、取引祭への納品が遅れたり、消費者へサービスを届けられなかったりといったことが発生します。

防災訓練を定期的、かつ徹底して行うことで災害時に自社が被るダメージを最小限に抑えられます。利害関係者へ損害を回避する上でも、防災訓練は重要な役割を持っています。

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企業が行うべき防災訓練の種類

企業が行うべき防災訓練の種類
防災訓練と一口に言っても、対応する災害や用途に応じてさまざまな種類があります。企業が行うべき防災訓練の種類を解説します。

避難誘導訓練

避難誘導訓練とは、災害発生時建物から安全を確認・確保しつつ避難するための訓練です。災害の種類に応じて、利害関係者を安全な場所へ誘導する目的で行います。

避難誘導訓練の具体的な内容は以下の通りです。

  • 災害発生時における適切な避難ルートの選定
  • 避難時の誘導、点呼・報告の役割と手順の取り決め
  • 避難マニュアルの整備

避難誘導訓練を定期的に実施し、災害時に落ち着いて適切な行動ができることを目指しましょう。

消火訓練

消火訓練とは、火災発生時の初動対応の手順を学ぶための訓練です。火災発生時、火は一瞬で燃え広がり鎮火が困難となります。そこで消火訓練により、炎が小さい火災発生初期に素早く消火する手順や方法を学びます。

初期消火は消火器や消火栓を使って実施します。マニュアルで使い方を覚えるだけでなく、実際に手を動かし、火を消してみるようにしましょう。水と空気のみを使う訓練用消火器などもあるので、上手に活用するのもおすすめです。1号消火栓・2号消火栓・簡易操作性1号消火栓といった、屋内消火栓の操作訓練も合わせて実施しておきましょう。

安否確認訓練

安否確認訓練とは、災害発生後に従業員の安否を確認する訓練です。具体的には、災害時を想定し安否確認システムなどで企業から安否確認の連絡を入れ、従業員が応答して訓練を行います。安否確認の連絡がすべての従業員のもとに滞りなく届き、従業員が問題なく回答できるかしっかり確認しましょう。

情報収集訓練

情報収集訓練は、災害発生時に従業員の安否に加えて、施設の被災状況、適切な対応などに関する情報を収集し、的確に伝達するための訓練です。平時より緊急時の連絡網を作成しておき、連絡網に沿って電話などで情報を伝えて訓練を行います。

大規模災害発生時は電話やインターネットなどの回線も通じにくくなる、または使用不可となることもあります。あらかじめ情報収集や連絡の方法なども訓練で取り決めておくと良いでしょう。

通報訓練

通報訓練とは、火災発生時から通報までの適切な行動を学ぶ訓練です。火災の被害を軽減するために重要となる、早期発見と初動対応を身に付けましょう。通報訓練では自分の身の安全を確保してから、落ち着いて119番通報を行います。

初動対応は、従業員が直接火災を発見した場合、自動火災報知設備で火災を覚知した場合、などさまざまなケースでの訓練を行います。119番通報してから消防車が到着するまでの時間は平均で5分以上です。安全確保ができ次第、迅速に通報するように訓練しましょう。

応急救護訓練

応急救護訓練とは、災害などで負傷した人を応急手当てするための訓練です。訓練では、救急車が到着するまでの間、負傷者の生存率を高めるために非医療従事者でも可能な以下の応急的な手当のやり方や対応方法を学びます。

  • 模擬人体装置やAEDトレーナーを使ったAEDの使い方
  • 心肺蘇生マッサージ
  • 止血などの手当て
  • 安全な場所への搬送

応急救護訓練は人命を救うために必須の訓練です。全従業員が対応できるように取り組んでおきましょう。管轄の消防署などで行っている講習を企業で受講するのもおすすめです。

救助訓練

救助訓練は、負傷者の救出や搬送などの方法を学ぶ訓練です。災害時には事業所・工場の設備や機器が倒壊したり、建物そのものが崩落したりする可能性もあります。救助訓練で人命救助方法を学んでおけば、救急隊や助けが到着する前に人名を救える可能性が高くなります。

救助訓練では、てこの原理で瓦礫を動かす方法や、ブルーシートを使った搬送の方法などを学びます。

企業様におすすめの災害用トイレ商品一覧はこちらにまとめています。

まとめ

企業の防災訓練の重要性や種類について解説しました。企業の防災訓練は義務化されています。災害への備えをはじめとした備えに加えて、防災訓練を定期的に実施することが、従業員や顧客の命を守ることにつながります。

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